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2019年7月号『背部痛の鍼灸治療』

 背中の痛みを引き起こす主な原因疾患は、寝違い、頸椎症、むち打ち症、椎間板へルニア、変形性脊椎症、など整形外科領域の疾患がほとんどです。
他には、膵臓の疾患、結石や胆石症や骨粗しょう症などの内科疾患や、感冒やインフルエンザ、腎盂腎炎(じんうじんえん)、帯状疱疹(帯状ヘルペス)など細菌やウイルスの感染によって背中の筋肉が痛むこともあります。さらに心筋梗塞や狭心症など心臓疾患の発作では、胸に起こる痛みが背中にまで及ぶことがあります。

 整形疾患が原因の場合、仕事などで、長時間座ってパソコンに向かっている、立ち仕事、中腰になることが多いなど、無理な姿勢を続けると背中の筋肉が緊張します。

 そして時間の経過とともに筋肉が疲労し、血行が悪くなって背中にこりや痛みを引き起こします。また、背中に無理な力がかかるような動作を行うと、急性の背部痛を招くことがあります。

 整形外科では、貼り薬や、止痛剤、筋肉を弛緩、疲労回復させるためのビタミン剤等が処方されますが、なかなか頑固な凝りや痛みが治らなくて悩まれている患者さんは多くいます。

 当院でも鍼灸治療で整形外科領域の背部痛を治療することが非常に多いです。筋肉が緊張している背部に、直接的に刺鍼することで、筋交感神経活動を抑制し、筋の過緊張を緩和させると同時に、鍼刺激によりCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が感覚神経末端から放出され、筋肉の血管を拡張させます。

 これらの反応が重なり、筋肉の過緊張が緩み、背部痛は軽減されます。直接的に痛みの起こっている背部に対する局部治療だけではなく、それぞれの原因に合わせた全身治療(根本治療)を同時に行うことで再発予防効果も期待できます。背部痛は、鍼灸治療が非常に良く効く症状の1つです。

投稿者:tcm-editor

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