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2025年07月号 「お灸は、女性に優しい治療法」

お灸は、中国の北方民族の民間医療として約2,700年前に発祥したとされています。中国の北方民族が、痩せた土地でも育つ艾(ヨモギ)を燃料として使い、病気の治療にも用いたことに始まります。
その後、医学として発展し、灸治療も鍼治療と同様に、中国最古の医学書「黄帝内経」に体系的にまとめられました。

「灸」の主な原料は、「もぐさ」です。「もぐさ」は、キク科の多年草である艾(ヨモギ)の葉の裏側にある綿毛を乾燥させて精製したものです。艾(ヨモギ)の葉は、外用薬(傷口の止血など)、服用薬(身体を温め、腹痛、胸やけ、下痢など)、灸治療の原料として様々な症状に効果があり、古くから身近な薬草として、使われてきました。

中国の清の時代に編纂された本草書「本草從新(1757年)」には、艾(ヨモギ)は、「苦辛」で、苦味、辛味の薬性を持ち、「生温」(身体を温める作用)、「熟熱」(陽が盛んになる)の性質を持ち、「純陽之性」で、衰弱した陽気を回復させ、十二経脈と三陰経脈を通り、気血を整え、寒湿を取り除き、子宮を温める効果があると記述されています。また、灸をすることで経絡の気血の流れを良くし、あらゆる病気の治療に用いることができます。

6世紀に日本に伝わってから、治療や養生のために灸治療が行われるようになり、それ以来、日本の人々の健康維持や健康増進に貢献してきました。しかし、現在では、灸治療には火傷のリスクがあり、火傷の傷跡が残る灸治療が、美容意識の向上から日本では受け入れられなくなってきたために、臨床での灸治療の応用は減少しています。しかし、中国医療現場では、一般的な婦人科疾患には、現在でも灸治療を用いています。

月経不順、不妊症、骨盤内炎症性疾患、月経困難症などは、体質が虚寒タイプの場合が多く、灸治療が非常に適しており、神闕穴(しんけつ)、 気海穴(きかい)、 関元穴(かんげん)などの経穴(ツボ)に、灸治療を施します。
灸治療法には、隔物灸といって、艾(もぐさ)と皮膚の間に介在物(例えば生姜、塩、厚紙など)を挟んで行う灸治療法もあります。肌に直接触れる通常の灸よりも熱さを穏やかにし、また火傷にもなりません。ご自宅で、ご自身で安全にセルフケアとして隔物灸を応用する健康法は、大変オススメです。

【婦人科疾患の灸治療の効果】

  • ・調経止血:月経不順や出血を止める。
  • ・安胎止崩:流産や不正出血を止める。
  • ・散寒除湿:寒さや湿気を取り除く。
  • ・暖子宮:子宮を温める。

投稿者:tcm-editor

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