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2025年08月号 起立性調節障害と中国医学

起立性調節障害は、思春期前後の小児に多くみられます。 自律神経系である交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることで、自律神経の働きが悪くなり、起立時に身体や脳への血流が低下し、立ちくらみ、失神、動悸、頭痛など、さまざまな症状を引き起こします。

また、朝になかなか起きることが出来ない、朝の食欲不振、全身倦怠感、頭痛、立っていると気分が悪くなる、立ちくらみなどの症状が起こります。 症状は午前中に強く、午後からは体調が回復することが多く、夜には元気になり、逆に目がさえて眠れないこともあります。

西洋医学の治療では、非薬物療法として、生活習慣の改善、十分な水分と塩分摂取、適度な運動、規則正しい睡眠、ストレス管理などを行い、必要に応じて薬物療法では、血圧を上げる薬や、自律神経のバランスを整える薬が用いられます。しかし、症状が長期化し、なかなか改善しないケースも多く問題です。

中国医学では、起立性調節障害は、「腎虚」(じんきょ)「脾虚」(ひきょ)という体質に分類されます。 「腎虚」とは、下半身に位置する臓器の働きが低下した状態を指し、様々な全身症状をもたらします。このタイプは、なんとなく身体がだるい倦怠感、根気が続かない、朝のめまい、軽い運動でもめまいや吐き気がするなどの症状があります。

また、「脾虚」とは、消化器系の機能が低下し、全身のエネルギーや栄養の代謝が不十分な状態を指します。
このタイプは、体位変換するとすぐに眩暈が起こる、胃腸が弱い、消化不良、食欲不振、下痢軟便、倦怠感などの症状があります。

中国医学治療(鍼灸治療、漢方薬)では、「腎虚」「脾虚」のタイプに合わせ、虚弱体質を補充する根本的な治療を進めることで、体質を改善し、起立性調節障害の諸症状を軽減することができます。

起立性調節障害は、一般的に理解されにくい病気で、周囲に理解してもらえないことで苦しむ人が多いため、「気持ちの問題」「怠けもの」という誤解や周囲の誤った対応が、心理的・社会的ストレスとなり、「ひきこもり」の原因になることがあります。
先日、所属するボランティア団体で、「不登校・ひきこもり」等に関する研究の第一人者である斉藤環(筑波大学教授)さんの講演会を奈良市で企画しました。講演会で、治療だけではなく、家族や学校と連携し環境調整をし、サポートしていくことの大切さを再確認しました。

『中国医学は、現代医学とは違う角度から人体を診る、もう一つの医学なのです』

投稿者:tcm-editor

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