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2025年02月号『強直性脊椎炎の鍼灸治療』

強直性脊椎炎は、多くの場合30歳前の若年者に発症する慢性進行性の自己免疫性疾患です。

主に脊椎・骨盤(仙腸関節)や胸部、肩関節、股・膝・足関節などに痛みや腫れを発症し、次第に全身広範囲に炎症性疼痛が拡がり、各部位の拘縮(運動制限)や強直(運動性消失)が起こります。

強直性脊椎炎の西洋医学治療では、炎症を抑えるために、消炎鎮痛剤や抗リウマチ薬を使いますが、いずれも長期間の服用が必要となり、腎臓に負担をかけたり、胃が荒れてしまい、継続するのも難しくなるケースもあり、問題です。

近年、少しずつ強直性脊椎炎の治療も進歩し、関節リウマチなどに劇的効果をあげている生物学的製剤の有効性が認められ使用が始まっています。

しかし、強直性脊椎炎の原因が、遺伝的要因の関与があることは、分かってきましたが、まだ明確に解明されていないため、確立した予防法や根治療法は無く、患者様の負担は大きいです。

中国医学で強直性脊椎炎は、リウマチと同様に、「痹証」に属し、「風湿病」の1つです。

発症原因もリウマチと同様に、外部に対する免疫・防衛機能が低下した「衛外不固」状態の身体に、風寒湿邪が侵襲したことで、関節などの経絡の気血の流れが悪くなり、関節などに痛みや強ばりを引き起こしたと考えられています。

中国医学治療では、関節などに痛み、強ばりがある場合には、直接関節周囲に鍼灸治療を行い、関節の血流を改善することで炎症を抑え、痛みを取り除き関節の動きを改善します。

また、強直性脊椎炎という難病に対し、消炎鎮痛剤や抗リウマチ薬治療と、鍼灸治療や漢方薬治療を併用する形の「補完医療」は、中国の医療現場では、昔から当たり前のように実践され、成果を上げています。

それぞれの病状を中国医学的に把握し、理解した上で、炎症(痛み)を抑えながら、患者様ご自身が、積極的に身体を動かすことができるように、鍼灸治療や漢方薬治療を行うことが、脊椎前屈などの強直を抑制・防止、あるいは進行を遅らせることにつながり大切です。

『西洋医学とは違う角度から人体を診る鍼灸治療は、もう一つの医学なのです』

投稿者:tcm-editor

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