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2024年07月号『掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と中国医学』

掌蹠膿疱症は、膿(うみ)が溜まった膿疱と呼ばれる皮疹が、手掌(手のひら)や足蹠(足の裏)に数多くできる病気です。

膿疱は、周期的に良くなったり、悪くなったりを繰り返します。
出始めに、よく皮膚が痒くなり、皮疹は小さな水疱(水ぶくれ)が生じ、次第に黄色い膿疱に変化していきます。その後、痂皮(かさぶた)となり、剥がれ落ちます。
後に、慢性化すると、これらの状態の皮疹が混在する状態になります。

また、慢性的に経過する中で、突然、鎖骨や胸の中央の胸鎖肋関節などの関節が痛くなり、掌蹠膿疱症性骨関節炎を起こす場合もあります。
この痛みは非常に強く、日常生活が困難になるほどです。原因は、ウイルスや細菌ではなく、自己免疫が関係する病気ではないかと推測されています。

治療では、ステロイド軟膏、ビタミンD3軟膏を塗布しますが、外用薬だけだと改善しない人が多いため、服用薬として、エトレチナートや、関節炎には、免疫抑制剤などを用いますが、強い副作用もあり問題です。

中国医学では、掌蹠膿疱症の原因を湿邪熱邪と考え、清熱作用、涼血作用、除湿作用のある生薬を各患者の病状に合わせて、方剤(漢方薬)を組み立て治療します。
鍼灸治療では、掌蹠膿疱症性骨関節炎の関節周囲に直接刺鍼することで、高い消炎作用や鎮痛作用があります。

自身の留学していた、北京中医薬大学に隣接する中日友好病院には、中国医学皮膚科の第一人者の名医である趙炳南(老中医*)に師事された中医皮膚科の銭文燕中医師が、今も掌蹠膿疱症患者を漢方薬で改善させています。
趙炳南(老中医)の作られた有名な方剤(漢方薬)、「養血潤膚飲」「健脾潤膚湯」は、今でも臨床でよく用いられています。

上記の「健脾潤膚湯」という方剤(漢方薬)の名前にある”健脾“とは、中国医学の脾の働きを改善するという意味です。西洋医学で言う、消化器系の胃腸の機能を正常にするという意味です。

また、西洋医学でも、掌蹠膿疱症に対して、免疫の働きを改善するために、腸内環境を整える治療を用いるケースもありますが、これは非常に中国医学の”健脾“治療の考え方と非常に類似しています。
*中国では臨床経験豊富な中医師を、敬意を表し老中医と呼ぶ。

投稿者:tcm-editor

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