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2024年05月号『ブシャール結節の鍼灸治療』

ブシャール結節とは、指の第二関節(PIP関節)の軟骨が摩耗することで、関節がこぶ状に腫れ、指関節が曲がって変形する病気です。
痛みは強い場合もあれば、中には全く痛みのない場合もあります。関節の変形が進行すると関節が曲がりにくくなります。

似た病気に「へバーデン結節」がありますが、こちらは第二関節ではなく、指の第一関節(DIP関節)で症状が起こります。
ブシャール結節、へバーデン結節ともに、指の変形性関節症に分類されます。閉経前後あるいは40代以上の更年期女性に多く見られます。

ブシャール結節の原因は、現在もはっきり分かっていません。ただし、加齢や更年期のホルモンバランス異常が背景にあると言われています。

保存治療として、テーピングなどで患部を固定し、安静を保ち、さらに、エクオール含有食品、末梢循環改善剤や消炎鎮痛剤を服用します。
また、ステロイド剤の関節内注射も疼痛緩和に効果があります。改善がない場合、手術が必要となるケースもあり深刻です。

中国医学では、指の関節症状は「痹(ひ)証」*の1つですが、根本原因は「腎虚」の範疇であり、「腎」機能が低下や不足している状態です。
「腎」は、内分泌臓器・泌尿器・生殖器・腎臓などの機能に密接に関わっており、「腎虚」になると様々な衰えの症状が現れるようになり、ブシャール結節のケースでは、関節の潤い成分が減り、関節炎を起こしやすくなり、炎症が長引くことで関節変形が起こると考えられます。

関節の炎症や腫れを鍼灸治療や、“越婢加朮湯”等の漢方薬で軽減した後に、「腎虚」を補うための補腎作用のある経穴(ツボ)に鍼や漢方薬で治療することで根本原因を改善し、再発防止が期待できます。
漢方・鍼灸治療とは、現代医学とは異なる角度から診る、もう一つの医学なのです。

*「痹証」とは、風邪、寒邪、湿邪などの邪気が経絡や関節を侵襲し、気血を阻滞し、関節や筋肉の痛み、四肢の脱力やこわばり、運動機能障害、腫脹などの症状が起こった状態。

投稿者:tcm-editor

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