no image

2023年10月号『中国の医療費・医療事情』

僕が留学していた25年ほど前の中国では、保険診療で針灸治療も患者負担が少なく、理想的だと思っていました。
しかし、現在は急激な経済発展と物価の上昇で様子が変わっています。

まず、これは当時から変わりませんが、中国の医療制度が日本と大きく異なる点は、同じ中国国民でも、保険料を支払っている居住地(戸籍のある地域)以外で診療を受けた場合には、医療費が全額自己負担になるということです。

高度な医療機関は都市に集中しており、不公平ですが、農村部の住民が、より高度な医療を求めて大都市に出向いて受診すると高額な医療費が全て自己負担になり大変です。
農村部の医療機関は決して満足いくものでなく、命に関わるような重大な疾患の場合、ワラにもすがる思いで、体調の悪い中、長時間を掛けて都市部まで来て受診するのです。それなのに、中国の病院では医療費は全て前払いで、受付時に大体の必要額を現金で納める必要があるのです。しかし提示された医療費があまりにも高額で支払えず、泣く泣く病院を後にするなんて光景は、めずらしくありません。

また、都市部居住者(都市部戸籍保有者)で、保険診療で医療を受けられるとしても、「掛号費(グワハオフェイ)」といって、名医などの医師の指名料は、別途実費で必要となります。
指名料は50元から500元と様々で、日本円で1000円から10000円もかかります。

さらに、国公立病院は、ランク分けされており、ランク(医療の質)が高くなるに従って、自己負担の割合が高くなります。
また、医師のランクによっても、初診料や治療費、使用する医療機材、治療薬などによって増額され、増額分は自己負担となります。

このような現在の中国の状況は、保険診療とは言うものの、問題が多いのも事実です。
それでもまだ中国の医療制度の根本である、中国医学と西洋医学を共存させ、適材適所に2つの医学を用いて診療する統合医療制度は、日本も取り入れるべきだと思います。

投稿者:tcm-editor

一覧に戻る