no image

2023年04月号『眼瞼下垂の鍼灸治療』

眼瞼下垂は、まぶた(瞼)が下がり、まぶたを持ち上げにくくなり、上が見にくくなる疾患です。

原因は、まぶたを引き上げる筋肉であるミュラー筋や挙筋腱膜が弱くなり、その付着部である腱膜に異常があることなどです。
病院での眼瞼下垂治療は、内服薬や注射では、なかなか治らないため、手術療法になることが多く問題です。

現代の中国医学では、眼瞼下垂を「上胞下垂」と呼ばれています。古い医学書では「睢目」「侵風」「眼瞼垂緩」「瞼廃」と記載されています。
急性の場合の原因は、まぶたに風邪(ふうじゃ)が侵襲する(まぶたに風が当たり、体表温度を急激に奪われて筋肉を冷やし、血液や神経の流れが滞る)と発症すると考えられていました。

また、徐々に眼瞼下垂症状が起こる慢性の場合などは、体質的に脾胃(消化器系)が虚弱で、食物から気(エネルギー)や血となる栄養の吸収が悪くなる、脾気不足*となり、栄養不足で筋肉が痩せて動きが悪くなるためです。

中国医学の治療では、急性の場合には、太陽穴(ツボ)などの眼瞼周囲に鍼灸治療し、眼輪筋など眼の周りの筋肉の血流を改善し、筋肉や神経の働きを活性化することで症状を改善させます。
慢性の場合には、健脾作用(消化器系を回復)、益気作用(エネルギーを補充)のある四物湯や補中益気湯などを鍼灸治療と併用し、眼の周囲の筋力を回復させます。

重症の眼瞼下垂など非常に回復が難しいケースもありますが、動眼神経麻痺など筋肉を支配する神経や交感神経に異常がある神経原性の眼瞼下垂などの後天性眼瞼下垂に対しては、鍼灸治療は有効です。
病院で手術やボトックス注射をされる前に、先ず鍼灸治療を受けてみることをオススメします。 中国医学は西洋医学とは違う角度から人体を診るもう1つの医学です。

*脾気不足:脾の気が不足し、脾の働きが低下した(消化吸収機能の減退)状態。

投稿者:tcm-editor

一覧に戻る