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2022年09月号『打ち身・打撲の中国医学治療』

打ち身・打撲とは、衝突や転倒などの強い衝撃によって、筋繊維や血管が損傷を受けた状態です。
軽度であれば、1~3週間ほどで自然に治っていきますが、放置してしまうと動かしにくさや違和感が完治するまでに何か月もかかるものもあります。

軽度の打撲は治療せずに様子をみても問題ありませんが、重度の打撲の場合は、合併症として骨化性筋炎やコンパートメント症候群などを起こさないように、初期の処置とその後の鍼灸治療で、しっかり回復させることが大切です。

また、和漢薬に、治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)という、その名前が示すように、捻挫や打撲などによる腫れや痛みに用いる和漢処方があります。

中国医学が日本に伝わったのち、日本で独自に創製された処方です。
打撲した患部は、血流が滞ることで痛みや腫れなどの障害を起こすため、血の流れを改善する効果(駆瘀血(くおけつ)作用)のある生薬で構成されています。川骨(せんこつ)、撲樕(ぼくそく)、川芎(せんきゅう)、桂皮(けいひ)、丁子(ちょうじ)、大黄(だいおう)、甘草(かんぞう)の7つの生薬です。

さらに、中国では、雲南白薬(ユンナンバイヤオ)は、最も有名な止血作用や活血化瘀作用(血流を良くし、流れが悪くなり停滞した瘀血(おけつ)を改善する)のある薬として古くから知られています。

雲南白薬は、中国雲南省の医師・曲煥章が1902年に開発したもので、当初は「曲煥章百宝丹」と呼ばれていました。
非常に高い効果のあるこの薬は、中国内外で「中国の宝」「外科の聖なる薬」と呼ばれています。雲南白薬の製法は、中国政府薬監局が管理し、近年まで成分も公開されていませんでした。

10年程前に、中国政府薬監局からの通達を受けて製薬各社は、説明書の成分内容を記載し、少量の有毒な成分が含まれていることを明記しました。
有毒成分とされたのはトリカブト属の「烏頭(うず)」の一種の「草烏(そうう)」です。中国の製薬各社は「適量であれば人体に悪い影響はない」とし、薬効があることを強調しています。

漢方薬とて、薬ですから、必ず医師の指導の下、症状に対する適量を厳守する必要があります。それは逆に漢方薬の持つ有効性を明確に示しているのです。

中国医学(鍼灸治療、漢方薬)は、現代医学とは、違った角度から人体を診る、WHOに正式に認められた、もう一つの医学なのです。

投稿者:tcm-editor

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