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2022年05月号『視野狭窄の鍼灸治療』

視野狭窄とは、視野の周辺から中心に向かって、視野が狭まってくる状態です。
原因となる代表的な疾患は、網膜色素変性や緑内障です。緑内障では進行すると視野狭窄に加えて視野欠損も起こり、脳腫瘍や脳血管障害などでも視野狭窄を引き起こすことがあります。

視野が狭くなる理由は、緑内障などで視神経の障害が進行すると視神経線維が減少してくるからです。視神経線維が減少すると、視神経から脳に情報が正確に伝わらなくなり、視野が狭くなったり欠けて見えたりします。
※(視神経は約120万本の細い神経線維が集まり束になったもの。神経線維は網膜全体を覆っている網膜神経節細胞から伸びており、大脳につながっている。)

西洋医学の視野狭窄治療では、それぞれの原因に合わせて眼科で処置や手術を受けることで、網膜神経を正常に回復させます。緑内障が原因の場合、眼圧の上昇を防ぐ薬物療法から開始し、十分な効果が得られない場合には、レーザー治療や手術を行います。
しかし、完全な治療法は確立されておらず、完治は難しいのが現状です。再発、進行し悪化するケースも多く、ほとんどの場合、症状と長く付き合っていくことになります。

中国医学(東洋医学)の本場、中国の医療現場では、視野狭窄などの治療にも鍼灸治療や漢方薬治療を西洋医学の治療と併用し対応しています。このような統合医療の実践は、相乗効果をもたらし、高い治療効果を生んでいます。日本では、中国のように病院の中に鍼灸治療を受けられる“鍼灸科”は存在せず、西洋医学の治療のみになっているのが現実です。 当院では10数年前、中国での視野狭窄鍼治療の順番待ちをしていた患者さんが、知人の紹介で来院され、数ヶ月の治療で視野が以前より広がり、症状が軽減された事例があります。

西洋医学に中国医学を融合させる統合医療は、中国では中西結合医療と呼ばれ、視野狭窄などの眼科疾患のみならず、多種の疾患に対して以前から用いられているのです。

投稿者:tcm-editor

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