「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」は、腓腹筋痙攣(こむら返り)、消化管の痙攣性疼痛・胆石の疼痛発作・尿路結石の疼痛発作などの平滑筋痙攣による症状や、筋膜性腰痛・坐骨神経痛・肩こり・寝ちがい症状などの骨格筋攣縮による症状に効果があります。
本来は単独で使用するのではなく、痙攣発作の原因を体質から診断し、改善する根治療法に必要な漢方薬と組み合わせて用います。
「芍薬甘草湯」の歴史は古く、中国医学の古典医書『傷寒論(しょうかんろん)』 に収載されています。
『傷寒論』とは、中国・後漢代の医師・張仲景(ちょうちゅうけい)が、その頃までの古典を参照し、自身の治療経験を合わせて傷寒病の治療法をまとめたものです。(“傷寒”とは、高熱を伴う疾患のことです。現代の医学では、これらの病気は、感冒症状のほか、インフルエンザ、マラリア、腸チフスなどの発熱を伴う感染症も含まれていたと考えられています。)
『傷寒論』には、現代でもよく耳にする「葛根湯(かっこんとう)」、「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」、「五苓散(ごれいさん)」なども漢方処方として収載されています。1800年以上も経た21世紀でも、これらの漢方薬が症状に苦しむ人々の助けになっていることは、「すごい!!」ことだと言えます。
近年、現代医学的にも「芍薬甘草湯」の有効性が研究され、構成する生薬である「芍薬」に含まれるペオニフロリンという成分は、筋肉が収縮するために必要なカルシウムイオンの細胞内流入を抑制し、結果として筋肉の収縮を抑え、さらに「甘草」に含まれるグリチルリチン酸は、カリウムイオンの細胞外流出を促進することで神経筋シナプスのアセチルコリン受容体を抑制し、結果として筋弛緩作用を発現すると分かってきました。
「芍薬甘草湯」は、筋肉の緊張を緩めて、痙攣そのものや痙攣で起こる痛みを抑える作用があるということは、歴史が証明済みです。
中国医学(鍼灸治療・漢方薬)は、現代医学とは違う角度から人体を診る、もう1つの医学です。
投稿者:tcm-editor