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2022年01月号『子宮下垂・子宮脱の中国医学療法』

中高年女性(40代後半~60代の女性)の快適な暮らしを妨げるこの疾患は、妊娠や分娩時の損傷が影響、加齢や栄養低下により体内のコラーゲンが減少、子宮周囲および骨盤底部の靭帯が緩む等が原因で起こります。

子宮が正常な位置より下がった状態を子宮下垂といい、下がった子宮、腟が裏返るようにして、外陰部からはみ出た状態を子宮脱。子宮脱は、膀胱が腟壁を圧迫して下垂する膀胱瘤や直腸を圧迫して膣後壁が下垂する直腸瘤を伴うことがあります。

また、女性は、尿道が男性に比べて短いため、笑う、くしゃみするというような、急に腹部に力が入ったはずみに尿が漏れる(尿失禁)という方が少なくありません。全女性の1割以上が、生涯のうちに、このような症状で治療が必要になるというほど、多くの女性が悩まされる症状です。

西洋医学の治療では、まずは保存療法で、骨盤底筋体操、生活指導、さらに保存的管理用下着の着用などを行います。しかし、子宮脱など症状が重い場合には腟内リングペッサリー装着や手術療法が行われます。

中国医学(東洋医学)では、子宮下垂などの骨盤臓器下垂は、気虚(エネルギー不足)のため気の昇挙(上へ持ち上げる)作用が弱くなることで起こると考えられています。治療では、エネルギーを補充するために、気を補充し、気の昇挙作用を強める効果のある漢方生薬の「黄耆(おうぎ)」が含まれている「補中益気湯」をベースに配合加減された漢方薬を用います。

鍼灸治療では、「子宮穴(下腹部に左右対称にそれぞれ位置する)」という、不妊症や子宮脱に効果のある経穴(ツボ)、さらに、生薬の黄耆のように気を補充し、気の昇挙作用を強める「気海穴(おへその下辺り)」に刺鍼し治療します。気海穴に刺鍼すると尿道、会陰部や骨盤底に鍼の刺激がひびくように感じ、その刺激によって骨盤底筋の血流が改善され、症状を改善することが出来るのです。 中国の病院では、西洋医学の保存療法に補完医療として、漢方薬や鍼灸治療を用いて治療することで高い効果を上げています。

投稿者:tcm-editor

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