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2021年10月号『機能性ディスペプシアの鍼灸治療』

機能性ディスペプシアとは、自覚症状として吐き気、上腹部のむかつき、胃もたれ、腹部の張り、みぞおちの痛みなどが現れているにもかかわ らず、内視鏡検査でも炎症や潰瘍などの器質的な病変が診られない状態です。器質的な問題がない機能性ディスペプシアは、内視鏡検査が普及する以前は、神経性胃炎やストレス性胃炎、慢性胃炎と診断されることがありました。同様の症状は、胃炎や胃潰瘍、胃癌、逆流性食道炎、感染性腸炎などでも現れるので、鑑別は重要です。
※「ディスペプシア」とは、直訳すると「胃弱・胃腸症」

機能性ディスペプシアの原因

  • 〇胃・十二指腸の運動機能の阻害:食べ物を貯める(胃適応性弛緩)、十二指腸へ送り出される(胃排出)などの運動に、何らかの異常が発生しているケース。
  • 〇胃・十二指腸の知覚過敏:胃の拡張刺激や十二指腸内での胃酸や脂肪に対して敏感になることで、様々な不調が現れやすくなるケース。
  • 〇ストレス・トラウマ(幼少期の虐待)などの精神的要因:強いストレス、不安感、うつ症状などの原因で、胃腸が不調を起こしやすくなるケース

西洋医学の治療では、薬物治療として胃酸分泌を抑える制酸剤・胃粘膜保護剤・消化管機能改善薬などが、いくつか併用されます。また、強いストレスや不安、うつ症状がある場合には、抗うつ薬や抗不安薬も使用されることもあります。このような対症療法では、症状を一時的に抑えられても根本的に改善されないケースの方が多いのです。

中国医学(東洋医学)では、胃腸の“機能”を整えるために、胃腸だけでなく心身の状態を総合的に捉えて治療します。機能性ディスペプシアの多くの症状は、心脾気血両虚(心血虚+脾気虚)と診断し治療します。漢方薬では、帰脾湯や人参養栄湯などを使います。

鍼灸治療では、胃腸の働きを改善させる効果のある腹部にある4つの経穴を組み合わせた「四門」を中心に、内関穴や、足三里穴を用い治療します。この胃腸症に対する鍼灸処方(経穴の組み合わせ)は、70年代、北京の有名な老中医であった王楽亭教授(首都医科大学)が、考案した処方です。効果が非常に高く、現在の中国の大学病院でも臨床で応用され続けています

投稿者:tcm-editor

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