no image

2020年1月号『神経性胃炎』

慢性的に、胃の不快感や痛み、胸やけ、腹部膨満感、食欲不振、夜間や空腹時の上腹部痛などの症状があるのに、病院で胃カメラ検査をしても胃に特別な異常はみとめられず、胃の機能障害が原因とされ、神経性胃炎だと診断されます。

欧米では、神経性胃炎のような機能的な胃の障害を「上腹部不定愁訴(Non-Ulcer Dyspepsia〈NUD〉)」と呼ばれています。

日本でも最近は、胃の不定愁訴(はっきりとしない不調)に対してNUDという病名が使われるようになりました。原因としては、ストレスや個人の性格など、心理的な要因の関与が考えられています。

ストレスを感じると、胃の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れ、胃酸の分泌や、食物を消化し、腸へと運ぶ働きなどが正常に行われなくなるためです。

西洋医学の治療では、胃の運動を活発にするために「胃運動機能改善薬」、胃酸の分泌を抑える「H2(胃酸)ブロッカー」などの薬物治療を行いますが、なかなか症状が改善されないことが多いようです。

最近では、煩雑な社会の中で神経性胃炎を患う人が増え、心理的要因が関与していることが多く、ストレスを避けリラックスした生活を送るよう指導するとともに、カウンセリングなどの精神療法も行われています。

中国医学でも、神経性胃炎の原因は、ストレスや心因性の場合が多く、中医治療では、胃腸の治療だけでなく根本的な原因として、精神活動に深く関わっている臓器である「肝」と、人の精神の中枢である「心」を中心に治療をします。(※西洋医学的には心臓が精神の中枢と考えるのは理解しにくいかもしれませんが、心身医学でいう、「こころ」と読むと理解しやすいでしょう。)

神経性胃炎は、この「肝」と「心」に関連のある経穴(ツボ)に刺鍼し、正常な働きを取り戻し、精神のバランスを整えれば、回復します。

西洋医学で行われ始めている心理的要因に対する治療は、中国医学では昔から行われてきました。特に薬を服用しない胃腸に直接負担のかからない鍼灸治療は、高い治療効果を上げています。

投稿者:tcm-editor

一覧に戻る