私が北京中医薬大学に留学していた頃、日本から数人の医師が北京中医薬大学附属病院を見学に訪れていました。私は、大学に頼まれ通訳として附属病院内を案内したのですが、その時に、推拿(中国医学式マッサージ)科で、中医師が、寝付きが悪いと訴える赤ちゃんに対して行っていたマッサージ治療を見て、日本人小児科医が、「昔、日本の地方都市で小児医療の研修を受けた際に、先輩医師から伝授されたマッサージ方法と非常によく似ている」と驚いておられたのを今でも覚えています。
もちろんその日本人医師が中国医学を学んだ経験があったわけでもないのに、両者がよく似たマッサージ方法で赤ちゃんの寝付きの悪さを改善するための治療をされていたということです。
赤ちゃんの寝付きが悪いからといって、睡眠導入剤を処方することは、ほとんど考えられない中で、なんとか症状を改善させようと試行錯誤し、日本の西洋医学の小児科医が考案したマッサージ方法が、中国医学式マッサージと同じような方法だったのです。
この時、私は中国医学も西洋医学も同じ人間を治療するものであり、西洋医学的なアプローチも中国医学的なアプローチも両者ともに大変重要であると確信しました。
現在の日本の医療は、西洋医学中心ですが、中国の総合病院では、内科や外科、整形外科と同じように鍼灸科も併設され、内科や整形外科で診た患者さんが必要に応じて鍼灸科へ回されて来るのが当たり前になっています。西洋医学と中国医学が上手く融合され患者さんの必要に応じた治療で対応しています。
現在、私は個人的には一部の婦人科医と連携させて頂き、婦人科疾患などの患者さんにも対応していますが、中国のように日本でも西洋医学と中国医学がしっかりと連携し、患者さんの病状に応じた統合医療が実践される医療へと近づいて欲しいと私は強く思っています。
赤ちゃんの寝付きが悪いという治療を例にしましたが、私は日々鍼灸治療に携わりながら各種慢性疾患や、西洋医学の対症療法のみの治療で苦しんでいる患者さんを診ています。
西洋医学だけでなく、中国医学(漢方薬治療、鍼灸治療、推拿治療)を用いることで症状が改善し、QOL(生活の質)を高めることは可能だということを日々実感しています。
投稿者:tcm-editor