直腸脱とは、直腸を支える骨盤底筋群と肛門括約筋(肛門をしめる筋肉)が、加齢や妊娠・出産など様々な原因から慢性的な腹圧の上昇で弱くなり、直腸が本来あるべき位置から下がって発生してしまう病状です。直腸の粘膜だけが脱出する 「不完全直腸脱」と直腸の壁全体が脱出する「完全直腸脱」とがあります。排便で、いきんだ時など腹圧が直腸にかかったときに直腸が肛門から脱出する病気です。痔核の脱出である脱肛と混同されがちですが、痔核と違い、肛門縁のあたりにある静脈叢が腫れていないのが特徴で、高齢者や出産経験者に多く見られます。恥ずかしくて病院にも行けず、悩んでいる方が意外に多いのです。 現代医学では、便秘がある場合、お腹に力を加える機会が増えてしまうため、まずは便秘を改善して排便習慣を整えます。このような保存療法で直腸脱をコントロールできないほど症状の重い場合には、手術も検討されます。 中国医学(鍼灸治療)では、子宮下垂、胃下垂など臓器下垂を起こすのと同様に、加齢による体力・筋力の低下、女性の出産過多、慢性下痢、過労、暴飲暴食などが原因で「脾胃気虚・気虚下陥」の病態に至り、直腸を支える骨盤底筋群と肛門括約筋などの筋力が低下し、直腸を固摂することができず、直腸が脱出すると考えます。 鍼灸治療法としては、下腹部の経穴(ツボ)に数カ所、刺鍼し、EMS(低周波治療器)で、微弱電流を鍼に流すことで、腹腔動脈の血流量が増加し、血流供給が増え、骨盤底筋群や肛門括約筋を活発化させ、支える力が回復していくことで直腸脱を治していきます。 また、根本原因である、「脾胃気虚・気虚下陥」を改善させ体力を取り戻すために、 胃腸の働きを活発にし、栄養分をしっかり吸収し体力を回復させる効果のある 全身治療も同時に行い、再発を防ぎます。 |
投稿者:tcm-editor