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2017年10月号 「慢性疲労症候群(英語名「CFS」)の鍼灸治療」

慢性疲労症候群は、風邪などにかかったことをきっかけに、風邪に似た症状がいつまでも改善されずに、長期化したような状態で発症することが多い病気で、身体を動かせないほどの疲労感が6か月以上の長期間にわたって続き、日常生活にも支障をきたします。   病院で血液検査や、全身の検査(ホルモンの異常、内臓や脳、神経系の検査など)をいくら行なっても異常が見つからない場合が多く、病気の原因もハッキリと分かっていないので、治療法も確立していません。

慢性疲労症候群の診断基準

  1. 悪寒もしくは微熱がある。
  2. ノドの痛み(咽頭痛)がある。
  3. 筋肉痛及び筋肉に不快感がある。
  4. 筋力の低下、脱力感がある。
  5. 頸部あるいは、脇の下のリンパが腫れている。
  6. 頭痛がある。
  7. 軽く動いただけで全身倦怠感が24時間以上も続く。
  8. 腫れや発赤を伴わない関節痛がある。
  9. 物忘れ、思考力低下、鬱症状などの精神神経症状がある。
  10. 不眠、過眠等の睡眠障害がある。

西洋医学の治療は、対症療法で、各症状の緩和のために薬物療法が行なわれます。うつ病向けの薬が効果を発揮することもあり、抗うつ剤、精神安定剤などが使われます。また、免疫系を回復させるために抗ウイルス薬や免疫調整剤が使われることもありますが、なかなか改善されないケースが多いのが現状です。

 東洋医学では、鍼灸治療や漢方薬治療を用いて慢性疲労症候群に対し高い治療効果を上げています。現在、西洋医学の慢性疲労症候群に対する治療の際にも医療用漢方製剤の「補中益気湯」が、積極的に臨床に用いている状況から見ても、慢性疲労症候群に対する東洋医学の有効性は明らかです。

しかし、本来、東洋医学では慢性疲労症候群に対して、西洋医学での薬の使い方のように『この病気に対しては「補中益気湯」を処方する』と決めて用いるのではなく、同じ病気であっても詳しく分析し、その上で各症状のタイプを診断し、そのタイプにあった処方、治療することではじめて効果があると考えています。

慢性疲労症候群・東洋医学のタイプ

①脾胃気虚(ex補中益気湯)
症状:倦怠感、息切れ、食欲不振、頭痛、めまい、内臓下垂、下痢、微熱など。
②心脾両虚(ex帰脾湯)
症状:倦怠感、めまい、心悸、不眠多夢、軟便、下痢、食欲不賑、精神不安、健忘など。
③肝気鬱滞(ex釣藤散、加味逍遥散)
症状:疲労倦怠感、胸脇脹満、お腹が張る、ため息、食欲不振、憂鬱、やる気がでない、肩こりなど。
④ 腎陽虚(ex八味地黄丸)
症状:疲労倦怠感、風邪を引きやすい、畏寒腹冷、腰痛、夜間頻尿、性欲減退、眩暈、耳鳴、健忘など。

このような、各タイプに合った漢方薬を処方すること、さらには鍼灸治療でもタイプに合った経穴(ツボ)を選択し鍼や灸による治療をすることが大切です。
鍼灸治療は、体に優しく有効な治療です。

投稿者:tcm-editor

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