五臓六腑に問題がなく、「気(き)」や「血(けつ)」がスムーズに内臓や体内を巡っていれば、自然と健康で美しくなるという「健美互根(けんびごこん)」(健康と美しさはたがいに根源は同じ)という考え方は、漢の時代(紀元前204年から200年)に編集された『黄帝内経』(こうていだいけい)に基づいています。
『黄帝内経』は、伝説の帝王・黄帝が臣下と問答する形式で書かれ、陰陽五行説に基づく生理・病理・診断・治療理論(『素問』)と、鍼灸の実践的な知識(『霊枢』)を体系化した現存する中国最古の医学書で、中国医学の原典です。
漢方薬や鍼を用いた治療法についての記述があり、当時から全身の「気」や「血」の流れを整えることで、健康を維持できると考えていました。
中国医学を用いた美容法は、唐の時代『千金要方』、『外台秘要』といった文献に、美白、若返りの面薬(81種類もの処方が記された顔用の外用薬)や薬膳など多岐にわたる美容法が記載されているため、この頃から始まったと考えられます。当時は、道教の影響を受け、宮廷で若返りや不老長寿を目的にした研究が盛んだったようです。
現代中国では1980年代頃から美容への関心が高まり「中医美容学」として、学術的にも臨床的にも研究が始まりました。中国医学では、顔を「五臓の鏡」、肌は「内臓の鏡」と捉えています。そのため顔面局所だけでなく全身の「気」「血」の巡りを整え、内臓機能の向上と自然治癒力を高めることで、肌のトラブルの根本改善ができると考えています。
最近、漢方薬や薬膳食事療法だけでなく、鍼灸の役割が注目されるようになりました。1990年代後半からアメリカで「美容鍼(Cosmetic Acupuncture)」という言葉が生まれ、2000年代になって、日本へ「美容鍼」が伝わり、現在では韓国や台湾などのアジア諸国にまで「美容鍼」は拡がりをみせています。しかし、中国ではそこまで拡がっていません。
中国医学の考え方が文化として根付いている中国では、肌の乱れやトラブル(たるみ、シワ、シミ、クマ、ニキビ)の治療で、直接顔面部に鍼治療をするのみの「美容鍼」より、肌のトラブルの根本原因を身体全体から中国医学的に診断し、根本的に体質改善治療する中医美容治療の方が選ばれているからです。
最近になって、中国内のSNSでも「美容鍼」らしき治療の写真などを見かけるようになりましたが、やはり「漢方薬入りの美肌クリーム」「美白の漢方サプリ」「美容健康茶」などなど、漢方薬的な体の内側から改善する中医美容の方が主流です。しかし、今後は中国でも鍼灸で美容を改善する「美容鍼」(Cosmetic Acupuncture)」が、注目され、中医美容治療法の1つとして取り入れられ、実践されていくでしょう。
投稿者:tcm-editor

