no image

2025年09月号 複視の鍼灸治療

見る物が二つに見えることを複視といいます。
複視には、片方の目に原因がある単眼性複視と、両眼に原因がある両眼性複視があります。

単眼性複視の原因は、白内障や乱視といった眼の病気が主です。
両眼性複視の主な原因は、眼筋の麻痺や眼球運動の異常ですが、重篤な疾患が隠れている場合もあり注意が必要です。

複視を起こす主な疾患は、脳腫瘍や眼窩内腫瘍、頭部外傷、脳血管障害(脳幹の脳梗塞、動脈瘤、海綿静脈洞部の血管異常)、海綿静脈洞の炎症、多発性硬化症、ギランバレー症候群(フィッシャー症候群を含む)などがあります。

また、脳以外に原因がある疾患としては、重症筋無力症や甲状腺眼症、糖尿病などがあります。
眼科治療では、原因となる病気がある場合には、まずその病気の治療を行います。

眼を動かす筋肉(外眼筋)に炎症を起こし、筋肉が肥大している場合には、ステロイド治療や放射線照射で炎症を抑え、複視を回復させます。 場合によっては、手術治療が必要になることもあります。
しかし、動眼神経、滑車神経、外転神経の単一の脳神経障害が原因の場合、時間はかかりますが、多くは自然に回復することもあります。しかし、回復が遅い場合や完全に治らない場合もあり問題です。

複視は、鍼治療の得意分野の1つです。眼を動かす筋肉と神経に原因があるケースや斜視が原因のものには大変有効です。

また、軽度の眼筋型重症筋無力症、外転神経麻痺、ギランバレー症候群などの他の病気が原因で起こる複視であっても、鍼治療が有効な場合も多くあります。
鍼治療では、直接眼の周囲の経穴(ツボ)に刺鍼することで、眼の周囲の血行が促進し、筋肉や神経の状態を改善することで、複視を回復させることができます。

また、眼の周囲の経穴(ツボ)だけでなく、根本的な治療として、全身の体質改善に有効な経穴(ツボ)にも同時に鍼治療を行うことで、全身の疲労回復や精神的ストレス等で乱れた自律神経を調整し、眼に対する鍼治療との相乗効果が生まれ、複視は早期回復し、眼の周囲の筋肉の動きも完全に治癒させることが可能となるのです。

『鍼灸治療は、西洋医学とは違う角度から人体を診る、もう一つの医学なのです』

投稿者:tcm-editor

一覧に戻る