慢性甲状腺炎(橋本病)は、自己免疫の異常が原因で、自己抗体が甲状腺を攻撃するため、細胞が少しずつ壊され、慢性的な炎症が生じる病気です。
「ある種のリンパ球が甲状腺組織を攻撃して起こるのではないか?」と考えられており、甲状腺組織が減少し、甲状腺ホルモンが生成されにくくなると、甲状腺機能低下症が生じます。甲状腺の病気は、どれも女性の方が発症しやすいのですが、慢性甲状腺炎(橋本病)は、甲状腺の病気の中でも特に女性に多く、女性は男性の20~30倍近い発症率になります。
また発症年齢は、20歳代後半以降、とくに30、40歳代が多く、幼児や学童が発症することは大変まれです。
自己免疫性疾患と呼ばれる病気は多種ありますが、何が原因で自己免疫性疾患を引き起こすのか、いまだに原因は、解明されていません。
慢性甲状腺炎(橋本病)は、甲状腺ホルモン値が正常の場合には治療の必要はなく、経過観察となります。
しかし、甲状腺が大きく腫大し、甲状腺機能低下を併発した場合には、甲状腺ホルモンの補充が必要となります。主な治療は内服薬(T4製剤:チラージン)による治療です。
しかし、慢性甲状腺炎(橋本病)は、原因不明の自己免疫疾患のため、予防は難しく、抗甲状腺自己抗体が正常範囲内になったからといって橋本病が治ったというわけではなく、完治することがないため問題です。
中国医学では、他の自己免疫性疾患と同様に、慢性甲状腺炎(橋本病)に対しても、免疫力が低下し、免疫が上手く機能しない原因を身体全体から診断し、原因となる体質を改善することで、甲状腺機能低下症を予防・回復させていきます。
慢性甲状腺炎(橋本病)は、中国医学的には以下の3つのタイプの体質が原因の場合が多いです。
- ○「気虚(ききょ)証」体質:生命エネルギーである「気」が不足して活力が衰える
- ○「肝鬱気滞(かんうつきたい)証」体質:ストレスなどの影響から、身体の諸機能を調節(疏泄[そせつ])する臓腑である五臓の肝の機能(肝気)がスムーズに働かない
- ○「腎陽虚(じんようきょ)証」体質:腎の機能が低下して、陽気(エネルギー)や栄養の基本物質である精(せい)が不足する
それぞれの原因体質(証)に合った経穴(ツボ)を選択し、鍼灸治療を行い、さらに同じ効果のある漢方薬なども併用することで、根本的な原因体質の改善することができます。
『中国医学は、現代医学とは違う角度から人体を診る鍼灸治療は、もう一つの医学なのです』
投稿者:tcm-editor